脳科学:心をつくる神経伝達物質

脳科学:心をつくる神経伝達物質

脳内の神経伝達物質の状態やバランスによって心の状態が左右されます。

 

人間の脳は、生まれ持った遺伝的傾向、子供のころの学習や大人になって経験した記憶、脳の神経細胞の健康状態の3つが総合化されてできたものです。

 

この3つのうち、脳の神経細胞の健康状態は、今日から自分の意志によって選択し、摂取する食べ物によって大きく改善することができます。
気分良く、情熱的に生きるためには、脳に十分な伝達物質を供給することが必要です。

 

これまで知られている伝達物質は100を超えますが、ここでは代表的なものを紹介します。

 

  • ギャバ: リラックス物質
  • ドーパミン: 快楽とやる気の物質
  • ノルアドレナリン: 快感とやる気の物質
  • アドレナリン: 快感とやる気の物質
  • エンドルフィン: 天上の喜び
  • セロトニン: 幸福物質
  • メラトニン: 同調物質

 

以下で、それぞれ解説しています。

 

ギャバ

体をリラックスさせてくれるのが、脳の過剰な興奮を抑えるブレーキ役として働く神経伝達物質であるギャバ(γ-アミノ酪酸)です。

 

脳の興奮は、適度なら快感を味わえます。
しかし、度を超すと、緊張が高まり、落ち着きがなくなり、ソワソワし、不安になり、不眠に陥ってしまいます。

 

ギャバは、神経細胞の表面についたギャバ受容体にドッキングし、神経細胞の興奮にブレーキをかけます。
多動、躁病、不安、睡眠障害、けいれん、慢性痛などの症状を緩和する薬の大多数はギャバの働きを増強することで鎮静効果を発揮しています。

 

もし、脳内のギャバレベルが適切なら、穏やかな心でいられます。
しかし、このレベルが下がると、不安、緊張、不眠に襲われます。
ギャバは非常に大事な神経伝達物質です。

 

ギャバは、ジアゼパム(商品名はセルシン)、クロロジアゼポキド(コントロール)、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬(マイナートランキライザー)、睡眠薬のバルビツール酸誘導体と同じように、脳にブレーキをかけて、過度の興奮を抑えます。

 

これらの薬はよく効く反面、副作用、依存性、習慣性がつきまといます。
しかし、ギャバにはこのような欠点はありません。

 

キャット(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)

脳を興奮させ、快感、やる気、元気、集中力、陶酔感を発生させる神経伝達物質が、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの3者です。
この3者が共有する化学構造から、カテコールアミンと総称され、キャットと略されることがあります。

 

ストレスを受けると、ノルアドレナリンもアドレナリンも放出されますが、ノルアドレナリンレベルは、セックス、恋愛、エクササイズ、音楽を聴くなど、どちらかというと、プラスの活動をしたときの刺激(ストレス)によって上がります。

 

ドーパミンは快感を発生させます。
ドーパミンレベルが十分に高ければ、集中力が持続し、任務を完遂することができます。
しかし、そのレベルが低すぎれば、うつ、集中力の欠如、無気力になり、仕事や活動を始められず、任務の完遂が困難となります。

 

アドレナリンは、ストレスに立ち向かうのに欠かせないホルモンです。
ホルモンとは、副腎や精巣などの内分泌腺で作られる物質の総称で、血液の流れに乗って全身に行き渡り効果をあらわす。
ホルモンが効果をあらわすスピードは、神経系よりも遅いですが、神経系と協力することで全身のバランスを保っています。

 

エンドルフィン

エンドルフィンという神経伝達物質は、中距離や長距離を走ったとき、爽快な気分にさせるランナーズハイを発生させることで知られています。
脳が自ら作り、モルヒネのような働きをする天然の物質なので、脳内麻薬脳内モルヒネとも呼ばれています。

 

ちなみにエンドルフィン(endorphin)とは、ギリシャ語で内部を意味するエンド(endo)とモルヒネ(morphine)の合成語です。
アミノ酸のチロシンから作られるので、脳内ではチロシンがとりわけ大事になります。

 

エンドルフィンは脳内で麻薬の受容体にドッキングすると、快感やオーガズムの絶頂間、おだやかな陶酔感を引き起こすだけでなく、痛みを和らげる鎮痛剤としても働きます。

 

もしエンドルフィンレベルが低ければ、依存症にかかりやすく、危ないことが大好きなリスクテーカーになりやすいことも報告されています。

 

セロトニン

気分や睡眠パターンに関係するのがセロトニンです。
セロトニンは気分を安定化するのに一番重要とされている神経伝達物質で、トリプトファンや5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)から作られます。

 

セロトニンのはたらきは、広範囲にわたります。
まず、血圧、消化、体温、痛みの感覚など、多くの身体的な機能もコントロールしています。
さらに、メラトニンの原料になるため、気分だけでなく、夜に眠りにつき、朝に目覚めるという一日のサイクルにも影響を及ぼします。

 

もし、セロトニンレベルが十分であれば、幸福を感じ、感情的にも社会的にも安定します。
しかし、もし不足すれば、多くの問題が発生しやすくなります。

 

それらは、うつ、不安、月経前症候群(PMS)、性欲の亢進、甘い物への渇望、睡眠障害、痛みの感受性の増加、感情の爆発による暴力行為、強迫的な考え、アルコールや薬物の乱用、自殺などです。

 

メラトニン

メラトニンという神経伝達物質は、セロトニンからつくられ、脳の内部の松果体という松かさに似た形の器官から放出されるホルモンです。

 

あたりが暗くなる夜の8時頃から翌朝の6時頃まで放出され、そのピークは真夜中の3時頃であるため、暗闇のホルモンとも呼ばれています。

 

夜になると眠くなるのは、暗くなって脳内でメラトニンが放出され、体温が下がるためです。
このようにメラトニンは脳のはたらきを光への感受性を通して、自然と同調させているため、同調物質とも呼ばれています。

 

体内時計をコントロールするのがメラトニンです。
セロトニンもメラトニンもしっかり分泌させて、快適・快眠な生活を送りましょう。